私は財産をすべて失い、48歳で再出発した…「カップヌードル」の生みの親が語る人生観
【連載】「あの名言の裏側」 第7回 安藤百福編(1/4)まずは自分の足で立ち、自分の意識で動き出す
このように、安藤氏は持ち前のベンチャー精神や実務者としての推進力を武器に、数々の事業を手がけるものの、激変し続ける社会情勢や予測もできないような不運に翻弄され、辛酸をなめるような経験を重ねてきた人物といえます。
とはいえ、詳しくは次回以降に触れていきますが、そうした安藤氏の苦悩や挫折があったからこそ、希代の新発明──インスタントラーメンが生み出されたといっても過言ではないでしょう。
安藤氏は、次のような言葉をのこしています。
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私は事業に失敗して財産を失い、四八歳から再出発した。六十歳、七十歳からでも、新たな挑戦はある。
私の人生は波乱の連続だった。成功の喜びに浸るまもなく、何度も失意の底に突き落とされた。しかし、苦しいときの経験がいざというときに常識を越える力を発揮させてくれた。
人生、いつもうまくいくとは限らない。もし、「ああ、ムダな歳月を過ごしてしまった。取り返しのつかないことをした」と思ったら、本当に取り返しのつかないことをしてしまったことになる。
(安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』より)
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失敗から学び、また新たな取り組みに挑戦する意欲さえ失わなければ、ムダな経験などひとつもないのだ──といったところでしょうか。
安藤氏は“実学の人”であると評されることが少なくありません。理論よりも実用、実践に重きを置き、社会生活に役立てることを目的にした学究。それが実学です。そうした安藤氏の姿勢は、もちろんインスタントラーメンの誕生にも繋がってきます。理想や夢をただの絵空事にせず、より具体的に、より現実的に形にしていき、人々の暮らしを豊かにしていこうとする強い実現力。それこそが安藤氏の事業家としての真骨頂といえるかも知れません。たった一人、自宅の裏庭にある狭小の小屋にこもり、黙々と研究を重ねて、インスタントラーメンを生み出した安藤氏。次回は、その開発の逸話を探っていきたいと思います。
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自らの足で歩き、自らの目で確認しなさい。そうでなければあなたの話には重みも説得力もない。
(安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』より)
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まずは自分の足で立ち、自分の強い意志で動き出すこと。すべては、そこから始まるのです。
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